【 ホームズとプリマドンナ 】Sherlock Holmes The Leading Lady
1990/英国/Harmony Gold/英語・日本語吹き替え 日本語字幕DVD/カラー/186分
監督:ピーター・サスディ 脚本:H・R・F・キーティング/ボブ・シェイン
ホームズ:クリストファー・リー/ワトスン:パトリック・マクニー
アイリーン:モーガン・フェアチャイルド/マイクロフト・ホームズ:ジェローム・ウィリス/ハドスン夫人:マーガレット・ジョーン
【 概要 】
爆弾の起爆装置を開発してしまったウィーン在住の科学者が、紛争国に軍事使用をされないためにと、イギリス政府に装置と設計図を売り渡した。
しかし、その情報はすでに漏れており、装置を受け取りに来たイギリス大使が科学者の家を出た直後にそれは盗まれてしまう。
犯人の後を追った科学者は、オペラ座劇場で犯人を追いつめるが、舞台の天井で揉み合う内に舞台に転落して死亡した。

イギリス政府は即座にシャーロック・ホームズに奪還を要請。ホームズは軍用装置の捜索に難色を示すが、兄のマイクロフトの説得でワトスンを伴いウィーンへと乗り込んだ。

事件現場のオペラ座で、舞台の上で事件を目撃したプリマドンナは、ホームズにとってただ1人特別な女性アイリーン・アドラーその人だった。
彼女は二年前に夫を亡くし、舞台に復帰していたのだ。
懐かしさに浸るまもなくホームズは捜査を始めるが、彼女の楽屋から犯人が着ていた外套が見つかり、さらに舞台の袖で何者かを目撃しているにもかかわらず、その人物を思い出すことが出来ないと言うアイリーンに不信を抱く。

誰を見たのか、心理学者のフロイト博士の協力で催眠治療で引き出そうとするが、アイリーンは無意識のうちにも証言を拒む。
事件よりもホームズと親密な関係になることに夢中なアイリーンに振り回されつつも、ホームズは彼女の協力を得て捜査を続ける。

容疑者が潜むオーストリアの総務大臣のパーティに、ホームズはアイリーンの愛人として、ワトスンはその従者として入り込む。その夜、アイリーンの服を着たメイドが、アイリーンと間違えられて殺される。
アイリーンは何を見たのか。
その真相も分からぬままホームズは設計図を追い、ロシア・ドイツの密偵と三つどもえの争奪戦を繰り広げる。

【 感想 】
まず長い。とにかく長い。というのが第一の感想です。
クリストファー氏が『シャーロック・ホームズの冒険 〜特別編〜 』のインタビューで「映画のはずがドラマ版として編集されたせいでむちゃくちゃになった」と憤慨していらした意味がよく分かりました。
長くても2時間程度の内容を、無理矢理3時間に引き延ばしたという感じで、一つのシーンがダラダラと続き、さらに似たようなシーンも何度も出てきます。つまり、映画版として2時間程度の枠にカットして編集されるはずだったシーンも全部採用した。という事なんじゃないかと思いました。

でも、それを抜きにしても、微妙な出来です。
まずキャラクター設定自体が良くないです。
ホームズは老いたことを気にしてうじうじとし、虫相手に室内で銃をぶっ放して壁の向こうのハドスン夫人を殺しかけるし、ワトスンは犯人と一緒に川へ落ちたりと、所謂『お笑い担当・間抜け系』で悲しいです。でも、そんなワトスンをホームズは好き好き大好きです。
ワトスンは従者への変装のため、立派すぎる髭をカットするのですが、ホームズ自らがチョッキチョキしてあげてました。仲良しだなぁ。
アイリーンとホームズの歳の差も変なので、パッケージを見ただけでは彼女がアイリーンとは思いませんでした。いえ、中身を見てもアイリーンとは思えませんが。

正典のアイリーンの歳は『ボヘミアの醜聞』当時1888年で30才。この作品は1910年という事なので、22年後の話。とするとアイリーンは生きていたにしても52才のはずなのに、この作品の女優さんはどう見ても30〜40代。ホームズの歳は56才ですが、この頃70才近いクリストファー・リーとの見た目年齢の差は親子ほどに見えます。

脚本も矛盾だらけで突っ込みに忙しいです。
そんなにやばい代物なら完成させるな馬鹿科学者! さらにそのやばい物の引き渡しにろくでなしの護衛1人で行くなイギリス大使! 都合良く落とし物をするな犯人! と、オープニングから最後まで突っ込みっぱなしです。
この作品は、クリストファー・リーの格好いいお姿をひたすら堪能するのが正しい鑑賞法だと思います。


ところで、オペラ座の客席に『スタートレック』のライカー副長ことジョナサン・フレイクスにそっくりな人が居たんですが、気のせいだったのでしょうか。でも、他人のそら似にしては髭の生え具合なんかもそっくりでしたし。友情出演??

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【 ヴィクトリア瀑布の冒険 】 Incident at Victoria Falls

監督:ビル・コーラン 脚本:ボブ・シェイン
ホームズ:クリストファー・リー/ワトスン:パトリック・マクニー
/マイクロフト・ホームズ:ジェローム・ウィリス/ハドスン夫人:マーガレット・ジョーン/レストレード警部:ケンウェイ・ベーカー/リリー・ラントリー:ジェニー・シーグローブ/セオドア・ルーズベルト:クロード・エイキンス
【 概要 】
引退を決意していたホームズの元に、国王からの依頼が来る。
それは世界最大のダイヤ“アフリカの星”がアフリカからイギリス王室に献上されるに辺り、偽のダイヤを護衛官に渡し、ホームズに本物を運んで欲しいという物だった。

ワトスンと共にアフリカに渡ったホームズは、早速ミルナー総督が管理しているダイヤを確認する。
しかし翌日、正式な引き渡しの為に金庫を開けると、ダイヤは抜け穴を掘って進入した強盗団に奪われ、仲間割れの末に殺された賊の遺体とダイイングメッセージが残されていた。
尊大で頭の固い現地警察は当てにならず、ホームズは独自に捜査を開始する。

ホームズは殺されていた男の家を調べ、男がヴィクトリアの滝に向かう列車に乗る予定だったことを掴み、すでに駅を出ていたその列車を追いかけて何とか乗り込む。
ホームズは乗客の中に犯人がいるはずだと睨むが、その列車には無線通信の研究でノーベル賞を受賞したグリエルモ・マルコーニ、インドのマハラジャの未亡人とそのパトロン、アメリカのルーズベルト前大統領や、その従弟夫婦、など錚々たる面子が乗り合わせていた。
ホームズは殺された男と続きのチケットを買った人物が仲間だったはずだとして、その人物を割り出すが、その男もまた車内で短刀で胸を刺されて死んでいた。
ホームズは最初に殺されていた男のダイイングメッセージから、今度の被害者がインドの盗賊団の残党だと見抜くが、彼はダイヤを持ってはいなかった。

次々に増える犠牲者と、ダイヤを発見できないことに落ち込むホームズを、ワトスンは気晴らしに連れだし、そこでホームズは事件の真相に迫る重要な証言を得、犯人とその真の目的に迫る。

【 感想 】
これまた前作同様、長いです。
でも今回は場所がコロコロ変わるお陰で退屈はしません。ただ、その分登場人物も増えてさらに分かりづらくなっています。
途中でもう何の事件の話だったか分からなくなって、象やキリンをのほ〜んと見ていたような気がします。アフリカいいなぁ。
アフリカの大自然や動物達はなかなか見応えがあって良いです。
ただ、前回のオペラ座の、何処の公民館ですか? と言いたくなるよな貧相さもなかなかでしたが、今回のエドワード7世の葬儀のヘボさは何とも言い難い寂しさを感じました。壮大なアフリカロケで資金が無くなっちゃったんでしょうね。

旅情ミステリーみたいなところがちょっとポワロちっくです。情報通のご婦人なんかも出てきますし。
小ネタ的に『四つの署名』の様な隠された財宝の話や、『マスグレーブ家の儀式書』のプラントンのように知的だけれど高慢なホテル副支配人が出てきたりするのも面白いです。
前作より面白いとは思いますが、犯人と間違われた少年が、銃を持った警官達に追いかけられるのをボケーと見ているホームズや、殺人犯を追ってツアーに参加したのに、新たな殺人が起きたからと言って突然不安で眠れなくなるワトスンとか、相変わらず突っ込みどころは盛りだくさんです。

ただ今回のワトスンは敵の罠にはまって穴に落ちたりと間抜けな面もありますが、孤児になってしまった少女に有り金はたいて面倒を見てあげたり、へそを曲げて夕食に行かないと言い出したホームズに付き合って自分も部屋に戻ってあげたりと良い人ですし、最後にきっちり活躍の場が有ります。格好いい!


旅情サスペンス物では、名所で殺人だのラブシーンが有るのはお約束ではありますが、ヴィクトリアの滝をバックに青空の下でウッフンアッハンされた日には、もうどうしようかと思いました。
しかし、脚本の都合とはいえあんな丸見えなところでする奴らは普通にいないですよ。という場所でしてます。もうちょっと何とかならなかったんでしょうか。
汽車に馬車で追いつくなとか、蛇に聴覚は有りませんとか、切れた伝線がいつ直ったんだとか、他にもめちゃくちゃなところ満載な脚本なので、ここだけ突っ込む事は無いと思いますが、インパクトが強かったので。

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