【 シャーロック・ホームズの冒険 特別編 】 The Private life of Sherlock Holmes
1970/米国/カラー/日本語字幕DVD/125分

監督:ビリー・ワイルダー 脚本:I.A.L.ダイヤモンド
ホームズ:ロバート・ステーブンス/ワトスン:コリン・ブレイクレー
ハドスン夫人:アイリーン・ハンドル/マイクロフト・ホームズ:クリストファー・リー/ヴァラドン夫人:ジュヌヴィエーブ・パージュ
【 概要 】
――ワトスンの死後、50年間封印されていたブリキの箱から、当時語られることの無かったホームズの事件の記録が発見された。


事件もなく退屈しきっていたホームズの元に、ロシアバレエ団の招待状が届く。行き渋るホームズを、暇に飽かしてコカインを打たれるよりはましと、ワトスンは無理矢理連れ出す。
そこでホームズはプリマドンナから依頼を受けますが、それは「頭脳明晰なホームズとの子供を持ちたい」というもの。彼女のプライドを傷つけず断るために、ホームズは「自分の好物はワトスン」と、ホモのふりをして断ります。
何も知らずに可愛いバレリーナと楽しく踊っていたワトスンは、「こちらの方がお好きでしょう」と男性ダンサー達に取り囲まれて色目を使われ大混乱。
事情を知って激怒し、ホームズに世間の誤解を解くため共同生活を解消しようと詰め寄りますが、あっさり丸め込まれて元のさやに収まります。

そのまま平和に時が過ぎたある日の夜、ずぶ濡れで記憶が定かでない美女が221bに運ばれてきます。彼女は殴られてテムズ川に投げ込まれ、そのショックで記憶が混乱していたのだ。
手に221bの住所が書かれたメモをもっていたが、メモの裏の文字は水で流れて解読不可能。しかし、メモを握っていた女性の手のひらには文字が反転して写っていた為、ホームズはその番号から彼女の荷物を探し出し、彼女の名前を知る。
翌朝、目覚めて記憶が戻った彼女――ガブリエル・バラドンは、英国に仕事で行ったきり連絡の途絶えた鉱山技師の夫の行方を探すべく、ホームズに助けを求めてきたベルギー人であった。

早速捜査を始めたホームズだったが、兄のマイクロフトから捜査の中止を命じられます。事件は政治絡みの重大事件のよう。
しかし、ホームズはガブリエルと夫婦を装い、ワトスンを従者に仕立てて身元を隠して捜査を開始します。
ネス湖のほとりの村に秘密があるとつかんだホームズ達は、スコットランドに向かいます。しかしネス湖では謎の怪獣まで現れ、ますます事件は謎めきます。

【 感想 】
配給会社と一悶着あって、4部構成の話の2部をつなぎ合わせて時間を短縮したそうですが、映画で4時間を越えればそりゃあ短くしろと言われますよ監督……。
ホームズのステッキが、バラすと色々な探偵道具になるという楽しいエピソードも有ったそうですが、それもカットされた為、一部ちょっと意味が通じなくなっていたりもします。
丸ごと削られた話はワトスンが活躍する話だったそうで、その部分だけテレビ版に出来ないかという話もあったそうですが、立ち消えになったようで非常にもったいない!
DVDには削られたシーンも一部収録されていますが、ほんのわずか。残念ながら後のフィルムはもう現存していないようです。


作品としては正典からかけ離れ、ホームズの恋話やネス湖のネッシーだの訳の分からん物が出てくる割にはよくまとまっているかな? という複雑な出来です。
事件は国家レベルに大きい割に、その事件が起こるまでが長く事件の終わり方も尻窄みなため、盛り上がりに欠けます。
事件発生まで時間がかかるのは、4話構成のつもりで作った4つの冒頭部分を幾つも盛り込んだせいかと思います。
確かにそこは削るのに忍びない部分で、ホームズとワトスンの関係がとても面白く書かれています。
この作品のワトスンはホームズのコカインの濃度を薄めていたり、恋のお相手に仕立て上げられ激怒しつつも、ホームズの様子がおかしいとみると即座に心配して駆け寄るし、ガブリエルにつられてホームズを「あなた」なんて呼んじゃったりと、いい味出しています。
また、ベイカー街の町並みや、221bのホームズの実験装置の出来映えは見事な物です。
ネス湖のネッシーは、まあ、正体があれですのでアレでいいです。

突っ込みどころは沢山有って、わざわざ小さい人を乗組員に選んだほど小さい乗り物に、ドイツの人達は全員乗れたのか? とか、19世紀に金髪外人女性が日本をウロウロ出来る? 等色々有りますので、その辺も楽しみながら見るのが良い観賞法だと思います。

さらに特筆すべきはクリストファー・リーのマイクロフトです! スマートで実に格好いい。しかし、ホームズよりも格好いいというのは一応脇役としていかがな物かと、悩んでしまうほどの圧倒的な存在感と貫禄です。
映像特典で彼のインタビューがありますが、なかなかのホームズ通っぷりを見せてくれます。
自らがホームズを演じた『新シャーロック・ホームズの冒険』についても語りますが、良い出来の映画になるはずだったのがテレビ用に前後編として編集されたので、それでバランスが崩れた事が気に入らないご様子です。



≪BACK ‖ TOP ‖