ホームズ物としては最大の作品数を誇るグラナダシリーズ。まずは珍しい作品からご紹介。と、言うことで、ここはグラナダ版番外編コーナーです。
DVD−BOXに収録されなかった作品をご紹介します。

【 The Best of Sherlock Holmes 】
1990/英国/MPI HOME Video/英語版VHS/30分

ホームズ:ジェレミー・ブレット/ワトスン:デヴィッド・バーク/エドワード・ハードウィック
【 概要 】
グラナダシリーズの名シーンをセレクトした物に、所々ナレーションが入っています。
店頭で流される販売促進用ビデオのような感じです。というか、最後にビデオのCMが入っているので、そのままズバリ販促ビデオなのかもしれません。
デヴィッド・ワトスンとエドワード・ワトスンの回が混じり合っていますが、締めは『最後の事件』のデヴィット・ワトスンという少々ややこしい代物。
【 感想 】
このために特に用意された映像などはないようで、目新しい点はありません。しかし、ずっとホームズとワトスンの出演シーンばかりですので、他の出演者には目もくれず、ひたすらジェレミーとバークとハードウィックを見ていたい時には良いかもしれません。

興味深かったのはホームズの悪癖のコカインとの決別シーンが取り上げられていた点。
「ホームズだってやってたんだしー」などと薬をやっちゃう馬鹿者対策か、『マスグレープ家の儀式書』でホームズ部屋でコカインを見つけて悲しそうな目をするワトスンのシーンが取り上げられていて、これを見てコカインをやろうなんて思う奴は人でなし! という感じの演出で、良いと思いました。

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【 The Four Oaks Mystery 】
1992/英国/10分?

ジェレミー・ブレットJeremy Brett
エドワード・ハードウィックEdward Hardwicke
【 概要 】
事件は、ホームズとワトスンが休暇でホームズの名付け親のレディー・コーデリアを訪ねている時に発生します。
穏やかな林の中のお屋敷に馬車が到着し、門を開けに降りた御者が、馬車から出てきた謎の人物に撲殺されます。そして御者のいないまま屋敷に戻った馬車の中からも年輩の紳士の遺体が発見されます。
そこでホームズは、のんびり釣りを楽しんでいたワトスンを引っ張り出して現場へ。
現場近くには、血の付いた不思議な形の火掻き棒のようなものが落ちていました。その謎の道具の使い道をズバリ見抜くホームズ。
滞在先に戻って食卓に付いても、推理に没頭して食事をしない事をコーデリアに叱られるのですが、「事件に取り組むときホームズはいつもこうです」とワトスンがフォロー。ホームズはコーデリアから、その地方では『四つの樫』という言葉が鍵となる財宝が隠されているという噂話を聞きます。今回の事件はその財宝にまつわる物なのか? しかしホームズは核心に迫る前に別の重要な――モリアーティ絡みの事件のため去っていき、事件は次の探偵へと持ち越されます。
『四つの樫の謎』のジェレミー・ホームズとエドワード・ワトスン
【 感想 】
この作品はインディペンデントTVが、チャリティー番組として作った四つの推理物のドラマの共作で、ホームズは冒頭を担当します。視聴者が犯人当てをするという趣向だったようです。
ネットで調べてみましたが、他のドラマは現代物とかもあったので、日本で言えば、金田一耕助と神津恭介と浅見光彦と安浦刑事くらい年代が別々の探偵・刑事ドラマの共作のようです。……全体像がよくつかめません。

とりあえず、ホームズは事件の始まりを担当するだけで、事件を解決する間もなく別の事件の為に去っていき、次のドラマの刑事だか探偵だかに推理を譲ってしまうので、ホームズの部分は10分程度です。
撮影は『サセックスの吸血鬼』の撮影後に、いつものグラナダスタッフによって行われました。

作中ホームズとワトスンの仲良しぶりがいい感じです。そして今更ですが、ジェレミーは格好いい! と再認識させられます。顔だけじゃなく、動作がね格好いいんですよ。
ハードウィックも素敵です。↑のイラストのように、馬車に乗っての去り際にカメラ目線で視聴者向けに台詞を言ってくれます。何と言っているのか聞き取れなくて残念なのですけど……。
只でさえ英語苦手な私が、よくない音質の物を必死のヒアリング勝負で見ましたので、おそらくそんなところだろうという怪しい物ですが、こんな感じです。

こういう作品ですので、ホームズのビデオやDVDに収録されていません。私は海外のコレクターの方に見せていただきました。でも、本当にホームズの部分だけのビデオだったので、この事件がどう解決するのかまでは知りません。あぁ気になるっ。
この作品に関する記事は、『Starring Sherlock Holmes』や『Bending The Willow』『Sherlock Holmes The Detective Magazine 36』等の書籍に掲載されているのを見ましたが、記事の内容も写真も同じ物で、この後の展開や犯人は誰かなどの詳しい情報は得られませんでした。
詳しい情報をお持ちの方はお寄せいただけるとありがたいです。

「データー不足で推理をするのは危険すぎる」とはいえ、他にデーターは無いのでホームズ部分だけを見て無理矢理推理すると……
御者まで殺されていることから、犯人は御者に顔を見られている――つまり、犯人は馬車にこっそり乗った訳ではなく、馬車に招き入れられた人物。つまり、被害者の顔見知り。
そして、馬車の中は密室とはいえすぐ外に御者がいる、今で言えば仕切付きのタクシーの中のような物。そんなところで殺人に及べば、一撃で殺せなければ騒がれて御者に気づかれて邪魔される危険があり、非論理的。つまり、計画犯罪ではなく突発的な犯行。
そして、被害者の外傷は頭部への一撃のようなので、揺れる狭い馬車の中でそれが可能なのは力のある男性と思われる。
謎の道具が現場近くに遺棄されていた理由は……結構大きな物だったのでこっそり持ち帰るのは難しかったからかな?
動機は、この話の中で語られた物から探すと『四つの樫』にまつわる財宝を巡る争いっぽいので、財宝の話を知っていて、なおかつそれを信じている人物。
これらの条件を満たす人が犯人だ! と、思うのですが……あぁ、結末が気になる。

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【 Biography - Sherlock Holmes 】

2001/米国/A&E Television Networks/英語版VHS/50分
デヴィッド・バークDavid Burke
【 概要 】
シャーロック・ホームズホテルでのシャーロキアンの晩餐会に招待された老デヴィッド・ワトスンが、ホームズとの思い出を語ります。

【 感想 】
『Biography(バイオグラフィ)』とは色々な俳優や有名人について調べたりインタビューをしたりする映像による『伝記』を扱ったビデオシリーズです。

今回取り上げられているのはシャーロック・ホームズですが、ホームズについての話をワトスンがするという趣向ですので、出演しているのはワトスン役のデヴィッド・バークだけで、ジェレミーはグラナダ版の映像でちらっと出てくるだけです。ジェレミーが亡くなった後に作れたのですから仕方がないのでしょうけれど、昔のインタビューとかちょっと欲しかったなぁ。

詳しい内容は……英語だけなのでよく分かりません。せめて英語字幕をお願いします! 同じバイオグラフィシリーズのスタートレック物の日本語版DVDは出ているので、そのうち出てくれる……と淡い期待を持っているのですが。
とりあえずの流れは、コナン・ドイルがホームズのモデルにしたベル博士の事や、シドニー・バジェットに挿し絵を頼んだ経緯。何故ホームズが“切り裂きジャック”事件に取り組まなかったのか等、作品について以外の話もあります。
当時の写真と現在のその場所との比較や、ホームズとワトスンが初めて出会った研究室の現在の様子など、珍しい映像も見られます。

話している内容は分かりませんが、デヴィッド・バークの『にかっ』という感じの笑い方は未だ健在で素敵です。お年を召してからのバークさんはデヴィッド・スーシェ主演のポワロの『ヒッコリーロードの殺人』にご出演されたのしか見たことがなかったので、元気なバークさんが見られたのは嬉しかったです。

『ヒッコリーロードの殺人』のアーサー・スタンリー卿の役は、その……不幸な役で、元気そうなシーンがなかったんですよね。いや、でも友情と愛に溢れた素晴らしい紳士の役でしたが。
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