【 シリーズ全般の感想 】

テレビシリーズとして13作品が制作されましたが、ビデオ化されたものは2作だけ。版権の問題だそうで、海外でもこの2作しか発売されていないようです。私はこのシリーズ好きですので、是非全作DVDで発売していただきたいです。

ダグラス・ウィルマーの演技は、ちょっとおとなし目ですが、くいっとあごを突き出す仕草などがバジェットの挿し絵のホームズそっくりで、良く研究してると感心します。
またワトスン役のナイジェル・ストックも一部ではドジで間抜けと評されていますが、この2作を見る限りではジェントルで素敵だと思いました。

【 まだらの紐 】 The Speckled Band
1964/英国/BBC/モノクロ/日本語字幕VHS/49分 
監督:ロビン・ミッドグレイ 脚本:ジャイルス・クーパー
ホームズ:ダグラス・ウィルマー/ワトスン:ナイジェル・ストック
グリムズビー・ロイロット:フェリックス・フェルトン/ヘレン・ストーナー:リアン・オーキン/ジュリアナ・ストーナー:マリオン・ダイアモンド/ハドスン夫人:メイ・ホルダー
【 概要 】
結婚を間近に控えて幸せいっぱいだったはずのジュリアが、恐怖の表情で「斑の紐」と謎の言葉を遺して亡くなった。
2年後、結婚を控えたジュリアの妹ヘレンは、姉が死ぬ前に聞いたという真夜中の口笛を聞く。
恐怖に駆られた彼女はホームズに助けを求めるが、傲慢で暴力的な義父のロイロット医師に後を付けられ、ホームズはロイロットから「この件に関わるな」という脅迫めいた警告を受ける。
しかし、かえってやる気を出したホームズはワトスンの協力を得て、ロイロットの恐るべき企みを暴きます。

【 感想 】
冒頭で、傲慢な義父に怯えながらも結婚を控えて幸せ一杯の姉と、それを心から祝福する妹の姿が本当に微笑ましく描かれていて、この後の悲劇が涙を誘います。頑張れホームズ! ……と、思わず力んでしまう。お気に入りの作品です。

脚本は原作にかなり忠実です。
まだ蝋燭が灯ってないのに明るくなったり、画面に汚れが付いていたりと不具合は有りますが、時代を考えれば仕方がない程度ですし、本物のチーターや猿をちゃんと出していて気合いが入っています。

個人的見所は、ワトスンがホームズから「ヘレン嬢の寝室の窓から進入できるか試してくれ」と、窓から外へ出るよう頼まれて「ここが二階じゃなくて良かったよ」と不承不承ながらも窓枠を乗り越えて外へ出るシーン。ここのワトスンはいつもこんな感じでこき使われているのかと思うと、楽しいです。

日本クラウンから現在もビデオが発売されています。

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【 高名な依頼人 】The Illustrious Client
1964/イギリス/BBC/モノクロ/日本語字幕VHS/49分 

監督:ピーター・サスディ 脚本:ジャイルス・クーパー
ホームズ:ダグラス・ウィルマー/ワトスン:ナイジェル・ストック
グルーナー男爵:ピーター・ウィンガード/サー・ジェームス:バラード・バークリー/キティ・ウィンター:ローズマリー・リーチ/ヴァイオレット・ド・メルヴィル:ジェニー・リンデン
【 概要 】
ホームズは名前は明かせない高名な方からの依頼として、将軍の令嬢ヴァイオレットとグルーナ伯爵の結婚を阻止するよう頼まれます。
グルーナはヨーロッパでも名うての悪人。しかし令嬢はすっかり騙されて回りの忠告を聞かず、グルーナの言葉しか信じません。
ホームズは、かたくなな令嬢も実際に被害にあった女性からの話になら耳を貸すかもしれないと、グルーナに弄ばれて身を持ち崩したキティと言う女性を見つけだし、令嬢の元に向かいます。
しかし、グルーナの強烈な暗示に掛かった令嬢は、まったくその話を信じません。そこでホームズは、キティから聞き出したグルーナ自身が綴った、弄んだ女性の記録帳を手に入れようと目論みます。

しかし、グルーナの差し向けた暴漢に襲われるホームズ。
自分が重体だと新聞に書かせ、ワトスンにグルーナの収集している中国陶器の収集家になりすましてグルーナの目を自分から逸らさせ、グルーナ邸に忍び込みます。

【 感想 】
令嬢はグルーナの催眠術で操られているという設定で、妙な感じです。
そして令嬢のメイクがまた凄い。あんなに付けまつげ付けてよく目が開くなぁと感心するくらい化粧が濃いです。

それはさておき、あまり上品とは言えない酒場で、自棄っぽく飲んでいるキティ嬢に、コートを掛けてエスコートするワトスンは非常に格好良い! まさに女性は君の領分だ! です。

このシリーズのワトスンは一部で『間抜け』と評されていますが、この2作品の中ではそれほどボケた事はしていません。
確かにホームズが「パイプとスリッパを取ってくれ」と言ったら、パイプと煙草入れに使っている"ペルシャスリッパ"を取って上げるのが当然の所を、普通に履くスリッパを取って上げちゃう行為は間抜けと言えば間抜けかもしれませんが、可愛いものだと思います。駄目なんでしょうかね。この程度の和み系ボケは有った方が作品バランスとしてはいいと思うのですが。
これ以外の他の話で間抜けなことをしてしまうのでしょうか? 他の話のビデオ化が待たれます。

しかし、ナイジェル・ストックはこの作品で評価を受けたため、1968年から始まったピーター・カッシングのシリーズのワトスンに抜擢されたと聞いていますので、当時の人たちには人気があったようです。私も好きです! ナイジェル・ワトスン。

日本クラウンから現在もビデオが発売されています。

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