【 シリーズ全般の感想 】
ピーター・カッシングは2度『バスカヴィル家の犬』を演じることが出来た、幸運な俳優さんです。
1度目の1959年の物はオリジナル色というか、制作会社のハマーフィルムがホラーが売りの会社であった為に、ホラー色の強い作品。 2度目は原作に近い形でと、違ったタイプの作品を演じられたことは楽しかったんじゃないかと思います。

カッシングがホームズを演じたのは1959年の映画『バスカヴィル家の犬』と、その後のテレビシリーズ16作です。(テレビ版『バスカヴィルの犬』は前後編ですので、作品数としては15作です)
そのうちDVDが発売されているのは、映画1本とテレビシリーズ4作だけのようです。しかも、その内日本語字幕があるのは映画版だけ。辛い。でも、テレビ版も面白いので英語字幕を頼りにがんばって見ています。

テレビシリーズのDVD化は初め『バスカヴィル』だけだったのが、好評だったためか他の4作も出たという感じでしたので、全話DVD化も夢じゃないかも! とワクワクして待っているのですが……。
グラナダ版で作成される事がなかった『ブラック・ピーター』が激しく見たいです!

【 バスカヴィル家の犬 】 The Hound of The Baskervilles
1959/英国/ハマーフィルム/日本語字幕VHS/83分

監督:テレンス・フィッシャー
ホームズ:ピーター・カッシング/ワトスン:アンドレ・モレル
ヘンリー・バスカヴィル:クリストファー・リー/セシール:マーラ・ランディ/スティプルトン:ユーイン・ソーロン/モーティマー:フランシス・ド・ウルフ
【 概要 】
その昔、粗暴なヒューゴー・バスカヴィル卿に捕らわれた娘が、隙をついて監禁された部屋から逃げ出した。烈火のごとく怒ったヒューゴーは猟犬を放って娘を追い、娘は湿原にある荒れ果てた遺跡に逃げ込んだが捕らえられ、祭壇のような場所で短剣で突かれて殺される。
その直後、ヒューゴーは巨大な犬に喉を噛み裂かれて死んだ。
以来、バスカヴィル家の者は魔犬に呪われ、魔犬を恐れて夜の湿原に行くことは無くなった。

それなのにチャールズ・バスカヴィル卿は湿原の遺跡後で遺体となって発見された。それに不審を抱いたモーティマー医師は、跡継ぎのヘンリー・バスカヴィル卿の警護を頼みにホームズの元を訪れる。

依頼を受けたホームズとワトスンがヘンリーのホテルを尋ねると、ヘンリーのブーツが片方盗まれ、残された片方には毒蜘蛛が仕込まれていた。呪いなど信じてはいなかったヘンリーも、身の危険を感じ初める。
そこでヘンリーはホームズの助言を受け、ワトスンを伴いダートムーアのバスカヴィル館に赴く。
ワトスンはバスカヴィル邸近くに住む農夫のステイプルトンと、その美しい娘のセシルに出会う。ヘンリーは不思議な魅力を持つセシルに強く惹かれる。

その夜、ヘンリーとワトスンは湿原に不振な灯りを見つけ、そこで脱獄犯のセルデンを発見するが逃げられてしまう。ワトスンはヘンリーを屋敷に送った後、セルデンを追う際に見た不振なもう一つの人影を追って再び湿原に向かい、そこでホームズと再会する。
しかし再会を喜ぶ間もなく鋭い悲鳴が聞こえ、ホームズ達は無惨な遺体を見つける。それはヘンリーの服を着たセルデンだった。
翌朝にセルデンの遺体を回収に行くと、遺体は荒れ地の遺跡に移動させられ、バスカヴィルの紋章の入った古い短剣で手足が切り取られていた。

地の底から魔犬の声が聞こえたという噂話から、ホームズは坑道跡に降り危うく生き埋めになりかけるが、そこで手がかりを見つけ、事件の核心に迫る。

【 感想 】
ホームズ映画初のカラー映画作品。
ヴァン・ヘルシング役で有名なピーター・カッシングとドラキュラがはまり役のクリストファー・リーが競演している実にハマープロダクションらしいキャスティング。
毒蜘蛛、湿原の遺跡、悪魔的儀式! と原作とはかけ離れたものがてんこ盛りではありますが、見所満載で映像作品としてはこれはこれでまた良いです。
この話ではホームズが比較的早く現れるので、ワトスンの影が薄いです。でも坑道でホームズが生き埋めになった時、みんなが諦めムードの中、独り望を捨てずに捜索を続けようとしたりして格好いいです。

↓の絵は、“ホテルにヘンリー・バスカヴィル卿を尋ねた際、ホテルの支配人と間違われて、靴の紛失について苦情をまくし立てられ、 『間違われちゃったねー』『ねー』と、目と目で会話しちゃってるホームズとワトスン”です。 ピーター・カッシングのホームズとアンドレ・モレルのワトスン 
(バスカヴィル家の犬より)
この作品は衣装の使い分けがきちんとされていて、時と場合に合わせてこまめに衣装替えをしてくれます。それがまた、どれもおしゃれで素敵なんですよ!
私の絵では分かりづらいですが、この貴族であるバスカヴィル卿を尋ねるシーンでは、手袋を普段の黒ではなく、 正装用とされるグレーの物を着用しています。そして、ワトスンは普通にはめているのですが、 ホームズは裾を捲っていて、手首がちらっと見えます。これはチラリズムなおしゃれなんでしょうか?
田舎というか地方のダートムーアに行った際には動きやすそうな英国式のスーツ……と言う具合で、芸が細かいです。

ワーナーホームビデオからビデオが発売されましたが、すでに絶版。オークションでたまに見かけますが、ハマーファンやシャーロキアンとの競り合いが必須ですので高値になることが多く、入手が難しい一品です。


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