【 まだらの紐 】 The Speckled Band
1931/英国/ブリティシュ・アンド・ドミニオンズ/モノクロ/英語版VHS/60分
監督:ジャック・レイモンド
ホームズ:レイモンド・マッシー/ワトスン:アサル・スチュアート
グリムズビー・ライロット:リン・ハーディング/ハドスン夫人:メリー・オールト
【 概要 】
まだ若く美しいジュリアが、突然謎の死を遂げた。
後日死因審問会が開かれそこに出席したワトスンは、気落ちしているジュリアの妹ヘレンを、彼女らの亡き母の友人として慰めます。

不安の消えぬヘレンに、彼女の友人の好青年アーミテージは結婚を申し込み、彼女を厳しく恐ろしい義父のライロットの元から連れだしてくれると約束をしてくれます。
しかし、その計画はライロットにばれてしまい、ヘレンは突然始まった屋敷の改装で、亡き姉の部屋に無理矢理移らされます。
そしてヘレンはその部屋で、深夜に不思議な笛の音を聴きます。
ヘレンは姉が死に際に残した「斑のバンド」という言葉を思い出し、姉の死にバンド(ジプシーの楽団)が関係しているのか? と、得体の知れぬ恐怖に追われ、ワトスンとホームズに助けを求めます。

建築業者に変装して屋敷を調べたホームズは、ライロットの恐ろしい企みを見抜きます。

【 感想 】
正典の『斑の紐』と、コナン・ドイルが1910年に戯曲として書き下ろした『斑の紐』を元に映画化したものです(正典の斑の紐が書かれたのは1892年)。
だから義父の名前がロイロットではなくライロットだったりします。
舞台ではH・A・セインツベリーがホームズを好演し、大成功を納めたそうです。
ライロットは舞台と同じくリン・ハーディングが熱演。これが好評を博し、ハーディングはアーサー・ウォントナーのシリーズではモリアーティ教授を演じました。

原作との主な変更点は、ライロットの周りにインド人の召使いや根性悪そうな家政婦などが居て怪しさ倍増。ホームズも改築業者に変装したりします。
さらにホームズの住居がベーカー街107で、制服を着たタイピストの女性達が忙しく仕事をしていて、ホームズに注意を受けて泣いている女性従業員なんかもいました。
ホームズは自分の部屋からスピーカーで事務員に調べ物を指示したり、と何だかハイテク。

画面が暗くて何をしているのか分からなかったりする場面もありますが、時代を考えれば仕方がない程度です。
でも、デジタルリマスターとかでDVDを出してくれないかなぁ。

余談ですが、ホームズを演じたレイモンド・マッシーはジェレミー・ブレットの最初の奥さんアンナ・マッシーの父親、つまりジェレミーにとっても義理とはいえ父。
レイモンドとジェレミーは親子二代でホームズを演じた事になるんですね。ジェレミーとアンナは後に離婚なさってしまったので数年間の親子関係でしたが、面白い偶然です。


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【 緋色の研究 】 A Study in Scarlet
1933/米国/K・B・Sプロダクション/モノクロ/日本語字幕VHS/72分

監督:エドウィン・L・マリン 脚本:ロベルト・フローリー/レジナルド・オウェン
ホームズ:レジナルド・オゥエン/ワトスン:ウォーバートン・ギャンブル
パイク夫人:アンナ・メイ・ウォン/中国人:駒井哲/ハドスン夫人:テンプル・ピゴット/レストレード警部/アラン・モウブレイ
【 概要 】
若く美しいアイリーン・フォレストは父の遺言に従い、父の所属していた秘密めいたスカーレッド・リングの会合に参加する。
そのスカーレット・リングでは、アイリーンの父の他にも不可解な死を遂げたメンバーがいた。
ホームズは、そのメンバーの未亡人からの「会に寄与される遺産を取り戻して欲しい」というありふれた依頼に、何故か乗り出す。
事件に、闇の帝王と言われる悪徳弁護士メリーデューが絡んでいたからだ。

ホームズは捜査を始めるが、その間にも犠牲者が。アイリーンの目の前でメンバーの1人のパイクが殺されたのだ。
父親の不名誉が世に出ると、事件の口外を禁じられたアイリーンは婚約者のスタントンにもうち明けられず1人悩む。
さらにもう1人メンバーが殺され、不安に駆られるアイリーン。そんなアイリーンを心配したスタントンはホームズに相談をする。
ホームズは、美しいパイクの未亡人の付いた嘘を見抜き、彼女の家を捜索し事件の謎を解きます。

【 感想 】
『緋色の研究』というタイトルですが、原作のそれとは違い、色々な話のつぎはぎというか、登場人物の名前もウィルソン氏だのベーカー氏だの、何処かで聞いた名前だし、色々な小ネタがちりばめられていて(例えば、カーペットに先の四角い靴の跡が付いていた@入院患者)、妙な感じですがそれはそれで楽しいです。
ホームズの見事な変装もあり、その時のメイドさんとのコミカルなやり取りは最高です。

でも全体的に見ると、全てに置いて説明不足の作品。
スタントンとホームズが知り合いっぽいのですが、どういった知り合いなのか説明は全くない。メリーデューはアイリーンを殺すつもりだったのか、愛人にするつもりで生かすつもりだったのかなども謎。
初めの内は回りくどい行動も、殺人を事故に見せかける為の細工だろうと納得がいくのですが、殺人とばれてからも下手な小細工をしまくるのが意味不明。

ワトスンもホームズの研磨石として必要な存在という感じで、結構良いなと思っていたのに最後の捕り物シーンでの間抜けな言動で台無しです。人の生き死にが掛かっているときに、1人で寒い寒いと文句をたれていた姿は情けなかった。あのシーンさえなければ〜。
さらに、画像が悪いせいも有ると思いますが、ホームズとメリーデューは体型や雰囲気が似ていて、引きのシーンでは見分けが付きづらいというおまけ付き。

アジア圏に売り込む為か、パイク夫人が魅力的な中国人女性だったり、日本人男優も中国人役でちょこっとだけ出てきます。しかしバイク夫人は重要な人物ですが、日本人俳優の役は何をしに出てきたのかすら分からない寂しい役です。
そして何故か住所が221bではなく221a。さらにミステリーの女王の『そして誰もいなくなった』のネタが使われていたのも何の意味があったのか。
何とも微妙な作品でした。


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